神を忘れた現代人は 天を飛び地を潜(くぐ)り得ても安住の地なし

全世界は、今や一大転換期に直面している。しかもその一歩の踏み出し方によって、忽ち全人類が想像を絶した大混乱に陥り、無数の人命は一瞬にして地上より消え、文化を誇る大都会も、みるみるうちに墓場となるやも計り難き前夜に迫っている。

その今日の世界的危機は、物質科学に精神科学が伴わぬ、変則的な文化の発達によりもたらされたものである。

しかし、一年に春夏秋冬の四季があるように、いかなるものも、一方的に永久に進むものではない。時はすでに物質科学時代より、精神科学時代へと、一大転換せんとしているのである。

そもそも人類の文化は、最初、東洋の釈迦、キリスト、マホメット等の出現から精神文化が発達し、つづいて西洋の物質文化の発達となったが、それがあまりにも急速であったため、精神科学文化が取り残されてしまったのである。

いかに物質文化が発達しても、精神文化がそれに伴わぬときは、あたかも狂人が運転する優秀な自動車と同様に、本来は人類のための文化であるべきものが、人類自身を破壊滅亡に導く文化となる。

したがって今日の世界は、物質文化の進歩に正比例して、人類の不幸はますます増大し、その死期はいよいよ早まっている。

この危局を救い、未曾有の難関を突破するには、精神文化の興隆に待たねばならない。そして今日の変則文化が是正され、物心両面の全き調和のとれた理想文化を建設するときに、この最悪は一変して地上天国、現世極楽と変わり、全人類が共存共栄し得る理想郷を迎えることになる。

その精神文化は究極へ行けば宗教となるのであるが、しかし過去の宗教はすでに時代遅れで、夏の綿入れや、大学生に小学校の教科書をもって教えるのと同様であり、今日の宗教ではない。

今日はもはや過去の宗教の尺度では、日々の問題が解決しきれないにも拘わらず、古酒を新しい皮袋に入れて新酒であると偽る者や、宗教の仮面のもとに悪徳を積む宗教家がいるために、人々は神の実在を否定し、すべての宗教を同一迷信視している。

そしてまた、今日の物質科学による指導原理は、至るところに利己主義的行動の集団を形成し、小は個人的親子夫婦間の、社会的には資本家と労働者の、国家的には政党の対立、国際的には民族の争いと、全部の者たちが根本の正しい神の道を見失って、そして利害の一致統一点が見いだされず混乱状態に陥っている。

たしかに今日の物質科学の進歩はめざましい。そしてその開拓精神は、月の世界の軟着陸にも成功したが、月の世界へ行って果して、人類にどれだけのプラスを得られると思っているのか、この地球ほど結構で充ち足りたところは他の星にはおそらく見当たらない。

ゆえに遠方を探し求めるよりも、足下の、否、足下どころか自己を反省して、自己に内在する目に見えない手に取ることのできない生命精神の本源を、そして自己の本質をはっきりと自覚するときに、はじめて真の神の実在を知ることができる。結局は、それに勝るプラスはない。

どれほど便利調法な機械をつくり、いかほど多くの富を集めたとしても、精神の安定が得られなければ、人間には真の幸福と平和はない。

そして精神と物質の均衡がとれて、共存共栄の道が得られる共通した中心原理こそ、真理であり、神の道である。

ゆえにこの際、皆が冷静に反省し、その実在する神をはっきり認識し、その中に一貫してある自然の法則、神の道に従って再組織をする以外には、安住の地を永遠に求めることは不可能である。